私の証明〜MEISHEN〜
人は誰も、私を見ない。
私はここにいるはずなのに。
目の前に、いるはずなのに。
どうしてだろう?
人は何故、私を見ないんだろう?
もしかして、
――ずっと、そう思っていた。
私は、ここにいない?
存在して、いない?
じゃあ、私は、
何?
視界には海しか入らない、けれど一歩足を前へと踏み出せば決して戻っては来れない一瞬の恐怖と一瞬の安楽を同時に与えてくれる場所。
そこに、一人の少女がいた。年は十ほどか、あるいは単に童顔なだけか、とりあえずその顔立ちはまだ幼さを残している。
長い黒髪が、潮風に舞う。
少女の丸い黒瞳は、どこか虚ろな表情をしていた。
虚ろな……。
――じゃあ、私は……。
不意に、昔の記憶が蘇る。
十年以上も前の、そのときの自分。その幻影が、少女と重なる。
「!」
我知らず、気づいたときには駆け出していた。
道路を一つ挟んだ、向こう側。車は来ていない。来ていたとしても、今の私にはどうしようもできない。足が止まらない。
「大丈夫」
少女を後ろから、抱きしめる。
「あなたは、ここにいる」
腕に力がこもったのは、特に意識してではなかった。
少女が振り向く。
その無表情な瞳は、あの頃の私と同じだった。
――あの頃の、
あの頃の私が、欲しかった言葉。
たった一つ、欲しかった言葉。
だけど私は、もらえなかった言葉。
それを、私は口にした。もう一度。
「あなたは、ここにいるから」
顔は、笑っているつもりだった。でもきっと、泣きそうな顔をしている。そうに違いない。
しばらくして。
「ふぇ」
少女が虚ろだったその顔を歪ませ、泣き出す。
私は少女を、優しく抱き寄せた。
少女の泣き声が、大きくなる。
*fin*
メイシェン視点。
ちなみにメイシェンは中国語で美人……だったような気がする。違ってたらすいません。
もともとはやたらと明るい捨て子の赤髪の猫娘でした。