あたしの証明〜ZERO〜



 ねえ、どうして誰もあたしを見てくれないの?

 どうして?

 あたしは、ここにいるよ。

 ここに、いるじゃない。

 どうして、誰もあたしを見てくれないの?

 あたし、ここにいるよねえ?

 いるよねえ?


 誰か、答えてよ。

 答えてよ。

 じゃなきゃ、あたしは。

 あたしは……。






「大丈夫」
 女の人の声。すぐ、後ろから。
「あなたは、ここにいる」
 ぎゅっと、あたしの体を誰かが軽くしめつけた。それであたしは、ようやく気づく。
 誰かが、あたしを抱きしめてる……?
 見上げるようにしながら首だけを動かして後ろを見ると、そこには一人の女の人がいた。年齢二十半ばくらいの、短い黒髪の女の人。その人から生えた二本の腕は、あたしを包み込むように伸びている。
 女の人は、あたしを見て、言った。
 その蒼い瞳に、あたしを映して、言った。

「あなたは、ここにいるから」

 女の人は、泣きそうな顔で――だけど、笑顔で言った。
 あたしの中に、言葉が沁み込んでくる。
 ――それは、
 ずっと、欲しかった言葉だった。
 だけどずっと、聞けなかった言葉だった。
 ……温かい。
「ふぇ」
 そう思ったとき、あたしは、泣いていた。



   *fin*





 一時期やたら「あたしは本当に存在してるんだろうか?」って思ってた時に書いたモノ。
 今でもたまに思う時あるんですけどね……。

 実を言うとこれはもともとショート・ショートではなく短編でした。
 その頃は話は全く違っていて、ある力を持つために異世界に引き込まれた名も無き捨て子の少女――異世界で老婆に拾われ、ゼロ(無限の可能性を持つ、の意)という名をもらう――が同じ捨て子でありながらも明るく生きているメイシェンに出会い、自分も彼女のように前を向いて生きていきたいと思い……メイシェンの幼馴染で行方不明だった筈のコウに出会ったり何だかんだで色々あって、結局最後は世界を滅ぼすためだった力で世界を救うという、何だかなぁな話でした。
 結局メイシェンに出会う辺りまで書いたんですが、それから先が進まずボツ決定。
 設定を全てと言っていいほど破棄し、ってか名前と容貌しか残ってないんですが、今回このような形でのお披露目となりました。
 ボツネタを復活させるにはやっぱり、肉をつけようとは思わず、骨だけでショート・ショートとか詩にするのが一番いいな。