光の河
逃亡生活というのは、そう長くは続かないものだ。
その緊迫した時の中では、体よりもまず精神が狂いだす。自分の追手であるものが類を見ないような大組織であれば、尚更だ。
だから彼は、諦めた。逃げることをやめた。
そして今、ここにいる。
自分が最も愛し、そして自分を最も愛してくれた人の眠る所に。
眼前には名前を刻んだだけの粗末な墓石と、その向こうには小さな町が見える。
小さな、本当に小さな町である。
その小さな町の小さな家々に明かりがともり、町を優しく包み込む。
――美しい。
彼は胸中で呟いた。今私の目の前に眠っている彼女も、この景色を見ながら死んでいったのか。
それはまるで、空を流れる天の川を地上に映したような、光の河。
こつ。
背後から、靴音。
彼はただ、じっと光を見つめる。
「見つけた」
パンッ。
*fin*