一話 →



   *プロローグ*



「ふあ……あ」
 ……暇だ。
 ここ最近、めっきり客が減った。そのせいで、同業者の間では客の取り合いが起こるし、さらには違法な手段を使って客を無理矢理こちらに連れてくるやつまで出てきた。
 ……不況だよなあ。
 え、何? オレは誰かって?
 …………。
 うそ、あんたオレの……って言うか、オレたちのこと知らないの? まったく……。あんたたちみたいなのばっかりだからこっちが不況なんだよ。
 いい? 説明するよ。
 オレたちはドリーマー。簡単に言うと、夢の妖精ってとこかな。ほら、耳が尖ってるだろ? んで、オレたちドリーマーの仕事は心が傷ついた人間を夢の一番深い所にあるオレたちの世界に連れて来て……だから簡単に言うと、人間の心を癒すこと。ドリーマーにも三種類あって、人間の世界とオレたちの世界の中間の空間にいつもその魂を維持していて、人間をこっちに連れて来る――つまりオレだけど――ナビゲーター、実際に人間が心を癒すのを手伝うレイバラ、そして直接人間の心を癒すことには関わらないけれどレイバラの補佐をするエイド。……まあ、エイドっていうのはレイバラ以外の仕事をしているドリーマーのことなんだけど。
 え? だから何で不況なのかって?
 ……あんたも鈍いねえ。オレたちの世界は夢の中にあるんだよ?
 …………。
 あんた最近、あんまり寝てないでしょ? ……あーあー、やっぱりそうだ。最近多いんだよなあ、ちゃんと寝ないやつ。
 ちゃんと寝て、そんでもって夢を見ないとこっちには来れないんだよ。いくら心が病んでてもな。
 だーかーらー、不況なんだ! こっちはあんたたちにしっかり寝てもらわないと困るんだよ。
「あ」
 来た。客だ。しかも完全にオレのエリア内……ラッキー、面倒くさい客の取り合いをしなくて済む。
「本当はもうちょっと暇してたかったけど……ま、仕事じゃしょうがないか」
 どっこいしょ、と立ち上がり(我ながらじじくさい。……体、鈍ってるからなあ)、一度のびをして眠気を払いのける。そして精神集中のために、一度大きく深呼吸して目を閉じる。
 ……実際言っちゃうとさあ、人間の魂をこっちに連れて来てずっとその状態を維持するのって、すっごく大変なんだわ。ものすんごく力使うしさ。……だいたい、もうそういうことができるやつがほとんどいなくなってるし。
 やっぱりあれかなあ? 今までのシステムが……あ、オレ喋りすぎ? ……そーだった。集中、集中。
「……汝の傷つきし心癒すため、今、我らの地へ……」


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